菊池俊輔 - The Woman Original Soundtrack ('80)

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the woman ザ・ウーマン 1980年 AKIKO KANA part1 - YouTube

某レコードショップのセールに紛れ込んでおりました。全く知らなかったレコードでしたが、これは見た瞬間に買っちゃうタイプのやつです。周りに聞いてみても誰も知りませんでした。

80年スタートの色モノ時代劇『ザ・ウーマン』のオリジナル・サウンドトラックです。時代劇のタイトルが『ザ・ウーマン』。リリースメディアはLPとカセットのみで未CD化。映像の方もDVD化はおろかVHSにもなってない(?)

奇跡的にYouTubeで映像を少し見ることができましたが、オープニングの浮世絵やカット割り、ナレーションがかなりいいんですよね。それに合わさるなかなかアヴァンギャルドサウンドトラック。

作曲はアニメ・ドラマのマエストロ菊池俊輔ドラゴンボールやアラレちゃんの音楽を作ったと思えばこういうのも作れる本当の天才です。

サウンドは今風に言えば一貫して「アンビエント」「ニューエイジ」「エクスペリメンタル」。なんでもカテゴライズするのは良くないとも思いつつ、音楽のイメージを言葉で伝えるにはジャンル分けが非常に有効です。

Discogsなかったので作っときました。

菊池俊輔* - The Woman Original Soundtrack (Vinyl, LP, Album) at Discogs

 

参考

  • なし

Stephen Cheng - Always Together (’67)

※これは2015年に別のところに書いたものを加筆修正したものです。

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いい音楽はないものかといつものようにインターネットを徘徊していた時に見つけ、それ以来虜になっている1曲を紹介したいです。

STEPHEN CHENG - ALWAYS TOGETHER.wmv - YouTube

 

一聴してただのロックステディではない。それなりにジャマイカの60年代のシンガーについては知っているつもりだったのですが、もちろん聞いたことのない名前であるし、ジャマイカ人の声ではない。名前も声も中国人です。しかし演奏はジャマイカの一流ミュージシャンに間違いはなさそうです。

3分に満たないこの曲を聴き終える頃には完全に僕はヤラれてしまっており、しばらく過呼吸に。その日はこの曲ばかりを聴き続け、その後も事あるごとに聴き直してみたり、彼について調べてみたりレコードを探している。英語には明るくないが、今のところこんなことが分かりました。

まず、はじめにこのシングルがリリースされたSunshineというレーベルについて軽く触れます。60年代からのジャマイカ音楽ビジネスを語る上で欠かすことのできない人物Ronnie Nasralla (ロニー・ナズラーラ) が設立したBMNというレーベルの姉妹レーベルとして存在したのがこのシンプルすぎる白のラベルが印象的なSunshineです。(日本が世界に誇るジャマイカレコード専門店ダブストアのここのページにナズラーラについて詳しく書かれているのでぜひ)

そんなSunshineからのリリースなんだからジャマイカ録音であることには間違いなさそうで、バックを固めるのもBMN/Sunshineの周辺ミュージシャンに違いないでしょう。Byron Leeでは?なんていう推測もありました。

さらに、このシングルについて興味を持っている人はたくさんいて「こんなクールで100%ルードなロックステディ初めて聞いたぜ。Want!」なんていうコメントなんかも見られます。情報量は極めて少ないのですが、このシングルはトップクラスのレア盤で、Hard To Find。コレクターが血眼になって探す1枚であるようです。信憑性はないですが、ジャマイカ在住の華僑に配るために極めて少ない数 (50枚かそこら) のみがプレスされたなんていう話もあるくらいなので確かにレア盤なのでしょう。

実際現物は愚か、ネットに出品されているのさえ見たことがありません。原盤のリリースはおそらく67年。ちなみに2011年に一度リイシューされているようですがそれも現在は非常に高額となっています。*1

 

 

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そしてStephen Chengについて。本名をStephen Chun-Tao Chengといいます。生まれは1923年、上海のようです。アメリカに渡りコロンビア大学でアートを専攻し卒業。

その後別の学校で今度は音楽を学んだようです。それからも彼は2012年に亡くなるまでアメリカに身を置き、シンガー・俳優・コンポーザーとして活躍、後にニューヨーク大学で東洋声楽の権威となり研究を続けたそうです。1枚のLPをリリースし、著書もあることが確認できました。

 

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次にこの楽曲「Always Together」について。これは台湾のトラッド・ソングのようで、原題は「阿里山的姑娘」(Alishan Girl) といいます。台湾の国民的シンガー、顧媚 (Carrie Koo Mei) が最初に歌ったようで、その後もテレサ・テンなどを筆頭に様々なシンガーによって現代まで歌い継がれています。

 

年代を追うと、このSunshineからリリースされたシングルは彼が四十代中頃に録音したものであることがわかります。ここからのは僕の推測なのですが、東洋声楽の権威としてすでに名を馳せていた彼が、その活動の一環として台湾の伝統的フォーク・ソングと、当時ジャマイカで一番イケてた音楽ロックステディの融合を試みたのがこのシングルではないだろうか。

実際、当時のジャマイカにあったTop-Deckという名レーベルは、設立者がJustin Yapという中国系のジャマイカ人だったし、ジャマイカのミュージシャンたちも中国人に対し抵抗がなかったのかもしれません。当然彼は英語を喋ることができます。

もちろん他に何か理由があったのかもしれないし、彼は軽い気持ちでやっただけかもしれません。またはジャマイカへバカンスに行ったついでに遊びで録音しただけかもしれません。

とにかくこのシングル1枚のお陰でStephen Chengという偉大な声楽者、もといシンガーがいた事を知ることができてよかったです。

 

参考

*1:2016年にダブストアからリイシューされている。

Terry Riley - You're No Good ('00)

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Terry Riley - You're No Good - YouTube

ラ・モンテ・ヤング、スティーブ・ライヒフィリップ・グラス、テリー・ライリー。ミニマル四天王は我々の心の拠り所です。今回はテリー・ライリーの2000年リリースの『You're No Good』について。

最近やっと聴いたのですが、かなりびっくりする内容だったのでメモ。これリリースは2000年にCDのみで出てるんですが、録音自体は67-68年頃のようです。30年以上眠っていた名演。いつも通りのミニマルだろうなーと思って聴いてみたら全然違いました。

しかしよくこんなもの発掘できたなー。ラップトップもDAWもない時代に2台のオープンリールを使ってソウルをズタズタにしばき上げる。

最初はブーンというMOOGの電子音からスタートし、2分半を過ぎたところでいきなり軽快なソウル・ミュージックがスタート。ちなみにこれ、同年にAtlanticからリリースされているHarvey Averne Dozenの『Viva Soul』の1曲目に収録されている曲ですね。

The Harvey Averne Dozen - You're No Good (1968) - YouTube

2台のオープンリールをそれぞれ左右に振って、微妙にBPMを変えてループしているっぽいです。最初はエコーなんですがだんだんずれが大きくなってきて、テリー御大の禿頭が頭に浮かび始めます。片方のチャンネルをシャットアウトしたりして遊びながら、だんだん気持ちよくなってきたとおもったらいきなりビープ音が発生し、アバンギャルドの地の底へ連れて行かれちゃいます。サンプリングの真の元祖。ストリートと地下室をつなぐ名演だと思います。テリー・ライリーの知られざる20分間。わりとまじで必聴。

 

参考

Laurene LaVallis - Key To Our Love ('84)

新しい好みの音楽に出会ったとき、そのアーティストについて調べてしまうことはよくあるかと思います。ほとんどの場合、インターネットを使えばだいたいのことはわかりますが、中には情報がほとんどなく、そのアーティストが何者なのかわからないということが稀にあります。

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LAURENE LaVALLIS - KEY TO OUR LOVE - YouTube

ソウルのシングルカルチャーではアルバムを出すことができず、リリースはシングル数枚のみというアーティストなんて掃いて捨てるほどいますが、これも80年代の米国のオブスキュアなソウルシングル盤。初めて聞いたときは部屋に稲妻が走って、頭が爆発したような、そんな感じがしました。

彼女と呼んでいいと思うのですが、これがリリースされたのはおそらく84 年。米国ではディスコ真っ盛りの中、なんとも荒々しいディープなスウィート・ソウルが展開されています。録音もどこかホームメイド感がありなんとも愛くるしい。正直なところ84年の録音だとはとても思えません。YouTubeのコメント欄にも以下のようなコメントが。

Still can’t believe this heat was recorded so late, who else had been recording this sound in 1984?!

 

一瞬にしてファンになってしまい、このシングルを探し回りましたがオークションなどにも滅多に出ない非常に貴重な盤であることがわかりました。

こういうときアーティストの素性が知りたいという衝動が抑えきれなくなり、インターネットでサーチします。半分は仕事でもあるのですが、半分は趣味。

 ラベルを見る限りおそらくデトロイトのアーティストなのでしょう。彼女がこの名義でリリースしたのはこのシングル盤1枚のみ。もしかしたら誰かの変名や活動初期の名義である可能性はありますが、その可能性は薄そうです。ラベルにあるTronic Productionってのはもちろん聞いたことがないですし、調べてみても他にリリースがなさそうなので、おそらくこの盤のみの適当なレーベルなのでしょう。

プロデュースとアレンジを務めるW. TaylorとN. Robinsonという人物についても調べてみましたがよくわかりません。ローレン・ラヴァリス?という聞き慣れない名字も調べてみましたが手がかりなし。インターネット上にもこのアーティストについての詳しい記述は一切ありませんでした。ただ、ミシガンにはLavallisという名前がチラホラある、というのは少しわかりました。

Irma Lavallis in Michigan | 3 Records Found | Spokeo

 

そしてこのレコードを探しているコレクターが非常に多いということがよくわかりました。彼女は今もデトロイトに住んでいるのだろうか。音楽はやめていて結婚して、もしかしたら孫もいるかもしれない。色々な俺の勝手な憶測が浮かんでは消え、答えは知るすべがありません。奥深き米国ソウルシングルの世界へようこそ。

 

参考

Johnny's Disk Record (Iwate, Japan)

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陸前高田のジャズ喫茶ジョニー。ローカル感となんか泥臭い感じがファンの心を掴んではなさないんです。で実はこのジョニー、70年代後半から自主レコード・レーベルも運営しておりコレクターの間ではちょっと名が知られています。

基本は正統派のモダン・ジャズがメインですが、後半にはアヴァンギャルドやポップスっぽいものリリースしているようです。オーナーの耳がいいんだと思うのですが内容がなかなかいいです。特にジャズはどれもバッチリ。

最近は再発やコンピのリリースなどもあり、音源を聴くこと自体はそれほど難しくないのですが、オリジナルLPのリリース情報が散らかっており、なかなかリリース全体を俯瞰できるページがなかったので簡単にまとめてみました。後半はちょっと不明な部分が多いです。

私のおすすめは、ジョニーの代名詞である『海を見ていたジョニー』と『アヤのサンバ』はもちろんですが、『太古の海鳴り』『海猫の島』『ハニー・サンバ』『午後3時の秋』なんかが特にいいかなと思います。

 

  • [JD-01 ] 中山英二 - アヤのサンバ ('78)
  • [JD-02 ] 中山英二 - マイ・プレゼント・ソング ('79)
  • [JD-03 ] 片山光明 - ファースト・フライト ('80)
  • [JD-04 ] 上野好美 - 太古の海鳴り ('80)
  • [JD-05 ] 坂本輝 - 海を見ていたジョニー ('80)
  • [JD-06 ] 小栗均 - みどりいろの渓流 ('80?)
  • [JD-07 ] 板倉克行 - 海猫の島 ('81?)
  • [JD-08 ] 園田まゆみ- 午後3時の秋 ('82)
  • [JD-09 ] キングコングパラダイス- あつさもさむさも ('84)
  • [JD-10 ] 中村ヨシミツ- 魂のギター ('8?)
  • [JD-11 ] 板倉克行- ハニー・サンバ ('8?)
  • [JD-12 ] リー・ウォンヒー+菊池コージ - グロー ('85)
  • [???? ] みよしようじ - 心情 (’84)
  • [???? ] ロンリー・ララバイ - 近藤こうじ ('8?)
  • [CPC-8003?] 高田和明 - 去りゆく季節 ('86)
  • [JD-16 ] 三上寛, 古澤良治郎 - 職業 ('87)

 

ジャケットデザインもアングラ感があって素晴らしいのでそれぞれの画像も載せたかったのですが、解像度が違ったりそもそもみつからなかったり、帯付きの画像がなかったり。気持ち悪かったので個別の画像は省略。

 

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参考